ふと、辺りが暗くなる。 見上げれば。 異様な大きさを持つ月が。 徐々に、徐々に。欠けてゆく。 そして、君たちの周りに闇が訪れた。 自らを裁く者の声 「今宵の月は、蝕の月。  大地が深き闇に包まれ、  静寂の中あらゆる者が姿を隠す」 「真は偽となり、偽は真となる」 「それまで確かだった世界を見失い、  わたくしたちは  初めて自らの真と向き合う」 「わたくしもあなたも、  己が蛮行を正義と言い張り、  当然のごとく剣を振るい、血を啜り合う」 「誰一人として」 「例え神でも、  自らの正義を証明することはできないのに」 「わたくしも、あなたも、神も咎人」 「それでも、もし……」 「本当に正義という物があるのなら……  真に正しき世界があるのなら……」 「わたくしは、  あなたと剣を交えずに済むのかしら?」 「ふふふっ。  ……あぁ、おかしい!」 「あるかどうかも解らない物を求めて。  多くの命を奪い続けて。  いつしか、自分しか信じられなくなって」 「それでもなお、  あの女は見護るというのかしらね」 「こんなにも罪深いわたくしの行いを?  歩んできた、この血まみれの道を!」 「…………」 「そろそろ、真の時間が終わる」 「お行きなさい。互いの姿が見えぬうちに。  お忘れなさい。わたくしの戯言を」 「全ては蝕が為したこと。  取るに足らぬ世迷いごと」 「闇が晴れれば、  また愚かしい戦いが始まる」